2019/3/23
卒業にあたり、皆さんへ「挑戦」という言葉を生物学上の2人のイノベーターの話を添えて贈りたいと思います。
一人目は進化論で有名なダーウィンです。彼は研究の合間の気晴らしで、経済学者トマス・ロバート・マルサスの「人口論」を読んでいたときに進化論のヒントを得たと言われています。
「人口論」とは、人口は食糧不足・戦争・感染症などによって抑制、減少され、選択されるという理論です。これが、ダーウィンが自然選択説を思いつき「進化論」を打ち立てるアイデアの元となったと言われています。
もう一人は遺伝の法則で有名なメンデルです。彼は不得意だった数学と物理学を学ぶため、物理学者ドップラーのもとへ行きます。当時、ドップラーは速度と周波数との間に発見した数学的な関係式を、駅で列車が通過するとき汽笛の音が変化することから証明しようとしていました。
メンデルはドップラーから「ある現象を説明するためには実験的、数学的証明が必要である」ということを学んだと言われています。後にエンドウ豆の交配実験を繰り返し、種子の変化を数学的に解析し、「メンデルの法則」を発見したことは皆さんもよくご存知のとおりです。
この二つのイノベーションは、両者とも専門分野以外から発見の契機や方法論を学んでいる点、そして的確に問題点を掴み、解決のために相当な努力をしている点で共通しています。
分野を超えた幅広い教養・知識を持つこと、問題の解決に向けて果敢に「挑戦」することの大切さを示唆してくれている面白いエピソードです。
国連が示した、2030年までに達成を目指す17分野の目標(「持続可能な開発目標(SDGs)」)があります。2030年といえばおよそ10年後。皆さんはきっと社会の第一線で活躍していることでしょう。「貧困をなくそう」、「気候変動に具体的な対策を」などさまざまな具体的目標が掲げられており、行政や民間企業、教育機関などが一体となって目標実現のために動いています。
SDGsを実現するためには分野を超えた横断的な発想が必要です。
社会の第一線で活躍する人材となるためには、4月からの新しいフィールドで、知識・教養を今まで以上に幅広く身につけ、自身の目の前の問題に対して果敢に「挑戦」していかなければなりません。それはこの国の未来を担っていく皆さんの義務であり、私の願いでもあり、社会の要請でもあります。
最後に、卒業生の皆さんには高校卒業という人生の節目の一つにあたってこれまでの学園生活を振り返ってもらいたいと思います。
さまざまな学校行事やクラブ活動・委員会活動で、一緒に学んだクラスの友達や厳しい練習、辛い合宿に耐えたクラブの仲間がいつもいたはずです。見えないところで陰から君たちのことを支え、いつも真剣勝負で授業する先生の姿もあったかもしれません。そうした多くの経験と人々との出会いは、かけがえのないものです。
中学・高校という人生で最も多感な時期に皆さんは城北の学園生活を通して多くの仲間と出会い、個性を認められてきました。個性は価値となり、そして、皆さんの自信の根拠となってきたはずです。これからも学園で出会った仲間や先生、そしてずっと見守り続けてきた家族を大切にして、「挑戦」という言葉を胸に自信を持って、城北を巣立って下さい。
(城北高等学校 校長 小俣 力)