2023/8/22
地理部では8月2日から4日にかけて,2泊3日の夏合宿を行いました。今回の調査対象地域は東北地方の中心,仙台市と東日本大震災で大きな被害を受けた松島から石巻にかけての地域です。地理部では5年前の夏合宿ではじめて被災地を訪れ,石巻の南浜地区でボランティア活動を行いました。今回は場所を変え,他の被災地を訪れることで,津波による被害が広範囲であったこと,人的被害が甚大だったこと,地形や住民の方々の防災意識の地域差が被災状況の違いに現れていることなどを学びました。この合宿で調査した内容は,9月30日と10月1日に開催する文化祭で発表します。また,文化祭に合わせて発刊予定の「ちりレポ第21号」にも掲載する予定です。文化祭にお越しの際はぜひ地理部の展示会場に足をお運び下さい!!
〔合宿1日目〕
松尾芭蕉の俳句でも有名な松島を訪れました。塩釜港から松島へ向かう船をチャーターして,潮風にあたりながら松島の地形を学びました。松島は起伏のある地形が海水の侵入で沈水し,山頂部分だけが島として残された「多島海」という地形で,地理総合の授業で履修済みの高1,高2の部員は実際に地形を観察して,理解が深まったようです。
↑松島湾クルーズ
船内では松島湾の「語り部」さんから話を伺いました。地形のほか,東日本大震災の時のことをご自身の実体験とともに話して下さいました。多島海の地形が津波の威力を軽減し,ほかの地域に比べると被害は小さかったそうです。部員達は真剣に話を聞いていました。
↑松島湾の語り部さん
↑松島湾の島々
〔合宿2日目 午前〕
今回の合宿では漁師さんが営む民宿に滞在しました。2日目は早朝から船に乗り込み,漁業を体験しました。「かご漁」という方法で,海底に仕掛けたカゴに入った魚介類を獲る漁を行いました。漁師さんが前日に仕掛けたカゴをみんなで引き上げると,タコやアナゴ,ワタリガニやウニなど,たくさんの魚介類が獲れました。もちろん全員,漁業は初めてで,普段食している魚介類は,こんな苦労をして獲っているんだ,ということを実感したようです。
↑漁船に乗り出発
↑かご漁体験
獲れた魚介類は,その日の宿の夕飯で提供して下さいました。タコの唐揚げとワタリガニの味噌汁は自分たちで獲ったうれしさも加わり,とても美味しかったです!!
↑タコが捕れました
〔合宿2日目 午後〕
午後は石巻市釜谷地区の震災遺構「大川小学校」を訪れました。ここは,東日本大震災の中でも特に悲しい被害が起きた場所です。大川小学校では津波により当時通っていた児童108名のうち74名と教員10名が亡くなりました。海から北上川を4kmほど遡上した場所にあり,津波は来ないと想定されていた点,地震発生後に校庭に避難したのちの行動がマニュアル化されていなかった点,津波襲来の情報を得ても学校の裏山に避難せず北上川沿いの堤防を目指して避難した点,そしてその道が行き止まりであることを把握していなかった点など,多くの要因が重なり尊い命が奪われました。「語り部」さんとともに現地をまわり,二度と同じようなことを繰り返さないために行うべきこと,学ぶべきこと,そして後世に語り継ぐことを教わりました。
↑大川小学校
↑真剣に話を聞く部員達
学校の裏手はすぐに山です。小学校低学年でも1分あれば登れる山です。なぜここに逃げなかったのか,大変に悔やまれます。実際の現場を見た部員達には,この出来事を家族や友人,後輩達に語り継いでいってもらいたいです。
↑裏山から大川小を望む部員達
〔合宿3日目〕
最終日は3班に分かれて仙台市周辺を自由見学しました。かつて国府や鎮守府が置かれた多賀城,伊達政宗が築城し仙台藩政の中心だった仙台城址,日本有数の鉱物標本を所蔵する東北大学の自然史標本館,仙台名産の笹かまぼこの手作り体験など,各々が合宿最終日を満喫しました。
↑仙台市内を背景に
部員達は夏休み期間中,地図や図表の作成,レポートの執筆を行っています。2学期が始まってからは,合宿での調査結果を文化祭で発表するための準備に取りかかります。地理部が現地調査した成果をご覧頂けますので,文化祭をお楽しみに!!
(地理部顧問)